ジャン・コクトー『ポトマック』

両親にとっては、奇妙な遠近法の法則によって、目の前で大きくなってゆく子供が、逆に遠ざかってゆくように見えるのである。

僕は恋をした。僕は悩んだ。僕は少なくとも(ブールデーヌの言葉を借りれば)《自分のことは自分でする》ことができるつもりだった。ところがいま、僕はあきらめている。
僕は綱を放した。
実のところ、僕はあの薄暗い状態がもっと長く続けばよいと、そればかり念じていたものだが、おびただしい熱と光とが、少しばかり早く孵化させてしまったようだ。
僕は恋愛についての、真情を吐露したノートをたくさん書き留めている。容易なことでは、このノートを整理しおおせることはできないだろう。だから、次にそれらのいくつかを書き並べるとしても、それは結局、この本がもういっぱいであって、そんなノートの入り込む余地はないことを証明するためでしかないのだ。
たとえば、こんなのがある、
僕らは互いに愛し合っている。それは一つの不安だ。
二人の人間を接合して、美しい太古の怪物を作る試み。
わずかな浸透。重なり合った皮膚と皮膚。ゴム。心のなかに出来上がるもの、崩れてゆくものを見分けることはむずかしい。