2011-01-01から1年間の記事一覧

三島由紀夫『宴のあと』

彼らの会話は、いかにも記憶の確かさ精密さを競うことに、重きが置かれすぎていた。それをじっときいていると、青年たちが女に関する知識で虚栄心を競っている会話と、どこか似ているような感じがする。不必要な精密さ、不必要な細部への言及、そういうこと…

コミックマーケット81三日目

10時国際展示場駅着、今日も西待機列がグルって大回りされるようだったので東に行ってみる。10時50分入場。うーんこれは西の方が早かったかも。一日目は企業に行く分で西の人が多いのかな。まあ最初にドコ行くかも決めてないような状態だったんだけど。 結局…

アルベール・カミュ『幸福な死』

「きみは貧乏なんだ、メルソー。それが、きみがうんざりしている半分の原因なんだ。あとの半分は、きみはいやいやながら自分の貧乏を仕方がないと思っていることにあるのだよ」 メルソーは相変わらずかれに背を向けたまま、風に吹かれる木立を眺めていた。ザ…

コミックマーケット81一日目

7:00宇都宮→小山(480円)、みどりの窓口でホリデーパス(2300円)購入(31日分も)、7:36小山→大宮、埼京線8:55発、国際展示場9:55着。往復で1000円くらい得なのかな。 10時ジャストの時点で西待機列が直行状態になっていないので久々に東待機列に向かって…

オスカー・ワイルド『ドリアン・グレイの肖像』

序文 芸術家は美しいものを創造する。 芸術に形を与え、その創造主を隠すのが芸術の意図である。 批評家とは、美しいものから受けた印象を、別の手法や新しい素材で伝えることができる者である。 自伝の形をとるのは、批評の最高の形式であり、最低の形式で…

冬コミに向けて

(承前)とか言ってたら志村先生のサイトとかブログとかツイッターとかみるみる消えていく最中。別名ハイクの方なんかは残ってたのは喜ぶべきか記憶にも無いのかと嘆くべきかとか思ってたらその辺まで軒並み失われていくのを目の当たりにしてさすがに動揺中……

新渡戸稲造『武士道』

義理は本来、義務以上の何物でもなかった。あえて言葉の由来といえば、たとえば親に対する私たちの行動は、愛が唯一の動機である。だが、それがない場合は、親孝行を強いるための何らかの権威が必要となる。そこで人々はこの権威を義理としたのである。 これ…

最近の

読んだ本とか描いた絵とか登録したWEBサービスとか。 ■誉田哲也『武士道シックスティーン』 ニッホヘーのお二人がはまってたようだったなあなどと思って読んでみた。面白かった。いわゆる百合的な見所もあるし。『武士道セブンティーン』『武士道エイティー…

村上龍『KYOKO』

「……でもね、ホセはわたしを助けてくれて、救ってくれたの、ただダンスを教えてくれただけなんだからオーバーに聞こえるかも知れないけどね、わたしにとって一番大切なものは何かって教えてくれたんだから、そうでしょ? どんなことがあってもこれがあれば生…

やさしい森

NHK-AC共同キャンペーン「やさしい森」のCMいいなあと思っていたので描いてみた漫画。当面イベント予定ないのでグレスケ状態でネットにアップしておく。webコミック!?いずれ本にも出来ればよいですが。しかしpixivには百合タグなんかも付けてみたけど、考…

町田康『告白』

身体の中心部は冷えきっているのに皮膚の表面は怖ろしく熱い。身体のなかにおそろしく速いものが疾走しているのに動作はことさらのろのろしているような感覚。そんな奇妙な感覚に熊太郎ははじめ戸惑い、なぜ自分はこんなことになるのか、と訝ったが、しばら…

志村貴子『淡島百景』『放浪息子』『青息吐息』

■ぽこぽこweb『淡島百景』2.竹原絹枝と上田良子 『青い花』から上田さん登場。第1話で「竹原王子」と言われていた絹枝さんとの関係が明らかに。当初からクロスオーバーあるかもとは書かれてたけど、ここまで本格的に話に絡むとは思わなかった。というか飄々…

ニーチェ『善悪の彼岸』

真理が女である、と仮定すれば――、どうであろうか。すべての哲学者は、彼らが独断家であったかぎり、女たちを理解することにかけては拙かったのではないか、という疑念はもっともなことではあるまいか。彼らはこれまで真理を手に入れる際に、いつも恐るべき…

萩原一至第二画集『裸2』

萩原一至第二画集『裸2』とらのあな専売にて登場! http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0010/26/57/040010265747.html 早速購入。『BASTARD!!』27巻が発売告知以来延期続きで先が見えない中、出す方も買う方もツナギって感じかなあと思っていた…

埴谷雄高『深淵』

――そうだ。権力は理論ではない。それは相反するものを容れる容器だ。それは理論の矛盾など恐れない。一言でいえば、その容器は持続された時間なのだ。俺の右手はいま除かれていてもやがて左手と並んでそこにはいるようになるかもしれない。だが、死者はそこ…

志村貴子『放浪息子12巻』

ぼくたちの、ゆくさき。中学3年生の文化祭、年越し、受験を経て卒業、高校生へ。ハイライトはやっぱり文化祭ファッションショーでのシュウ君高槻さん並び立ちかな。ユキさんしーちゃんの目の前ってのも含めて、最終回でも通用するかもしれない。 その他の感…

ドストエフスキー『悪霊』

彼女の心中には、彼に対する不断の憎悪、嫉妬、軽蔑の気持にまじって、やむにやまれない愛情が秘められていた。夫人は二十二年このかた、塵っぱひとつ彼の身にかからぬようにと、それこそ乳母のように彼の世話をやいてきた。もし問題が、詩人としての、学者…

マンガ・エロティクス・エフvol.71

志村貴子『青い花』小さな恋のメロディ。2話続けて井汲さん周辺の話だけで終わってしまうとはさすがにちょっと予想外だった。しかし井汲母の過去が読めたのはよかった。つっても異常な病気みたいな扱いされてる経緯としてはまだよくわからん気もするが。 そ…

ポール・ヴァレリー『テスト氏』

わたしは、文学に対して疑念を抱いていたし、詩というかなり正確な作業に対してさえそうであった。書くという行為は、つねに或る種の「知性の犠牲」を要求するものである。たとえば、文学書を読むような場合、その際の諸条件が言語の極端な性格さと相容れな…

コミックマーケット80

今回は三日目のみの参加でした。知り合いスペースへの挨拶も開場前にほぼ済ませ会期中は自分のサークルでまったり……なのにちょっと席を離れた30分位の間に声かけてくれる人いたりするんだよな……(あるあるネタ)。それはともかく。 来て下さった方ありがとう…

夏コミ告知

8/14(日)コミックマーケット80(三日目)@有明・東京ビッグサイト http://www.comiket.co.jp/ 東1ホール「K-57b」【AsaiBombClub】 ■新刊『月刊二鳥修一』 「放浪息子」本(成人向)。土居くん&シュウ君。 ■新刊『増刊二鳥修一』 「放浪息子」本(成人向…

村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』

『蜂蜜パイ』 少なくとももう迷う必要はないんだ、と淳平は思った。決断は既になされたのだ。たとえその決断をしたのが彼以外の人間であったにせよ。 「これは取引なんかじゃない」と高槻は言った。「ディセンシーとも関係ない。お前は小夜子のことが好きな…

エロfVOL.70、コミックビーム8月号

■マンガ・エロティクス・エフVOL.70 志村貴子『青い花』前号ラストから続いての井汲さん話。幼少から順を追って康ちゃんとの日々。年代毎に同じシルエットながら微妙に髪型変わるのとかホント上手い。あと「京子やせた?」の首筋の美しさ。そしてセックスは…

ドストエフスキー『いまわしい話』『鰐』

『いまわしい話』 彼はもう星(勲章)を二つも持っていたけれど、天から星をつかみとるような大それたことは嫌いだったし、何事であれ、自分の意見を吐くことは、特に好まなかった。彼は誠実でもあった、というのはつまり、何か特に不誠実なことをしでかさね…

鈴木先生と税所先生

『鈴木先生』のドラマ面白かったなー。つって、放送終了後たぎってガー描きたくなったんだけど、メインキャラの男子、女子、先生、あと神田&入江でそれぞれ大ラフみたいのコピー用紙に描き殴ったらちょっと落ち着いた。つーか一枚絵ちゃんと仕上げるのって…

夏コミに向けて

夏コミ参加します。当落確認はネットでは6/3(金)、通知も6/6(月)には届いてたんですが。 8/14(日)東・K57b「AsaiBombClub」 三日目!何年振り?つかひょっとしたら初かも。俺コミケは一般参加が高校から、サークル参加は大学からで、最初はジャンル・…

コミックビーム7月号

志村貴子『放浪息子』先月号に引き続き、それぞれの高校編。佐々ちゃんがツインテほどいて成長しちゃった感……。千葉さんもプリント忘れて同級生に頼んで見せてもらったりとクラスに馴染む努力してる様子。さてシュウ君はといえばバイト先の喫茶店に女生徒用…

ハーマン・メルヴィル『白鯨』

俺の名はイシミールと呼んでもらおう。数年前に――さよう、なん年前か、正確なことはどうでもいいのだが――財布の中はほとんどからっぽだったし、それに陸ではもうこれと言って興味をひかれるようなこともなかったので、すこし船を乗りまわして、水の世界でも…

志村貴子『淡島百景』onぽこぽこweb

太田出版のweb連載空間ぽこぽこにて志村貴子『淡島百景』新連載開始。 http://www.poco2.jp/comic/awazima/ まずいきなり26ページもあってビックリした。8ページ位の軽めのを予想してた。絵もデジタル移行の実験も兼ねたりするのかなと勝手に考えてたが普通…

ドストエフスキー『死の家の記録』

冬は早く監房の戸がしめられて、みんなが寝しずまるまで、四時間は待たなければならなかった。それまでは――騒がしい音、わめきちらす声々、哄笑、罵り、鎖の音、人いきれ、煤、剃られた頭、烙印を押された顔、ぼろぼろの獄衣、すべてが――罵られ、辱しめられ…