アーウィン・ショー『夏服を着た女たち』

『死んだ騎手の情報』

「われわれの世代は危機に瀕している」と化粧台にのった彼の手紙にはタイプしてあった。「縮小の危険。われわれはあまりにも早く冒険を経験してしまった。愛は親しみに変り、憎悪は嫌悪に、絶望は憂鬱に。情熱は好意に。われわれはささやかな、しかし命がけの余興で従順な小人の生活に甘んじている」

『愁いを含んで、ほのかに甘く』

恋人たちは伝記作家になる。静かな真夜中を過ごした、あの三ヶ月のあいだに、私は彼女の過去をあさって、彼女の少女時代と娘時代と野心の中身についてささやかながらもわかってくると、彼女を前よりもいっそう完全に自分のものにしているような気になった。彼女について知れば知るほど、ただ美しい女というだけではなく、非凡なかけがえのない女だという確信を強めたのである。