村上龍『イビサ』

そうだ、まず死滅させなくてはならないのは誰の中にもあるマゾヒズムなのだ、マゾヒスティックな魚達は決して陸に上がろうとは思わなかったに違いない、どんな生物であれDNAや発生物質の中にマゾヒズムはない、被虐願望はルールの中に生まれる、自分の中にではなく世間に存在する、わたしはサディストにならなくてはならないのかも知れない、それも他者の被虐願望を見て満足するサディストではない、変化させようとする意志を持つものだ、

言うまでもなく、恐怖はイマジネーションである。従って、知恵というのは恐怖とイメージと情報の関係を知ることだ。