ヴィトゲンシュタイン『論理哲学論考』

かつて人はこう言った。神はすべてを創造しうる。ただ論理法則に反することを除いては、と。ーーつまり、「非論理的」な世界について、それがどのようであるかなど、われわれには語りえないのである。
「論理に反する」ことを言語で描写することはできない。それは、幾何学において、空間の法則に反する図形を座標で表したり、存在しない点の座標を示したりすることができないのと同様である。

命題は語の寄せ集めではない。ーー(音楽の主題が音の寄せ集めではないように。)
命題が語へと分節化されるのである。
意味を表現しうるのはただ事実だけであり、名の集まりではない。

哲学の目的は思考の論理的明晰化である。
哲学は学説ではなく、活動である。
哲学の仕事の本質は解明することにある。
哲学の成果は「哲学的命題」ではない。諸命題の明確化である。
思考は、そのままではいわば不透明でぼやけている。哲学はそれを明晰にし、限界をはっきりさせねばならない。

生の問題の解決を、ひとは問題の消滅によって気づく。
(疑いぬき、そしてようやく生の意味が明らかになったひとが、それでもなお生の意味を語ることができない。その理由はまさにここにあるのではないか。)
だがもちろん言い表しえぬものは存在する。それは示される。それは神秘である。