アーサー・C・クラーク『楽園の泉』

「きみは六ヶ月以内に戻ってくるさ」とチュー世界大統領はいったものである。「権力は麻薬のようなものだ」

「われわれは昼前には食事をしません。精神の働きは朝の時間のうちがいちばん冴えていますから、物質的なことに乱されるべきではないのです」
すばらしい味のパパイヤをかじりながら、モーガンは、この簡潔な言明にこめられた哲学的な断絶を思った。彼にとっては空腹こそまさに高度の精神の働きを乱し、それを完全に阻害するものだった。常に健康に恵まれた彼は、精神を肉体とを分離しようと企てたことはなく、そんな努力を必要とする理由も思いつかなかった。

この世のあらゆる計算能力を総動員しようとも、彼が予測していない問題――すなわちまだ生まれていない悪夢への保証はないのだった。

過去の夢に背を向けると、モーガンとキングズリーは、未来の現実のほうへ歩いていった。

子供たちを相手にするというのは、これまたアリストートルから教わった手がかりだった。
「"子供は大人の父"(三つ子のたましい百まで)というふるい格言があるんですよ。"父"という生物学的概念は、われわれ双方にとって同じように異質のものですが、この単語はこの文脈の中で二重の意味を持っているのです――」