コミックビーム9月号、シンカンVOL.2
■コミックビーム9月号
志村貴子『放浪息子』表紙&巻頭カラー。表紙はシュウ君の凛々しい顔アップ。2ヶ月連続表紙&巻頭カラーってことで、来月は高槻さんのアップだったりするのかしらん。カラーページも二回分そのまま単行本に載せるとしたら豪華な一冊になるな。マジでアニメ化ってのもテレビじゃなくて単行本オマケになったりして。
本編は修学旅行から帰って進路相談。男子女子それぞれ仲良くやっておる。そしてシュウ君は安那ちゃんの部屋に連れ込まれて制服を着せてもらうというラブっぽさ。表情豊かな安那ちゃんがかわいい。
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2010/08/12
- メディア: 雑誌
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志村貴子『隣人』。アパートの隣の部屋の女の子が気になる青年の話……から展開して、女性側から隣の青年に向ける眼差しで閉じる、少し不思議なお話。タイムパトロールなんて出てきたり志村さんには珍しい設定。ちょっと『生活維持省』(星新一のコミカライズ)思い出した。『シンカン』自体『ネムキ』の姉妹誌(?)だからSFとかミステリーみたいな空気が合うのかな。
- 作者: 志村 貴子,川原 由美子 ほか
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2010/08/20
- メディア: コミック
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三島由紀夫『憂国』
暗いひびわれた、湯気に曇りがちな壁鏡の中に、中尉は顔をさし出して丹念に髭を剃った。これがそのまま死顔になる。見苦しい剃り残しをしてはならない。剃られた顔はふたたび若々しく輝やき、暗い鏡を明るませるほどになった。この晴れやかな健康な顔と死との結びつきには、言ってみれば或る瀟洒なものがあった。
血は次第に図に乗って、傷口から脈打つように迸った。前の畳は血しぶきに赤く濡れ、カーキいろのズボンの襞からは溜った血が畳に流れ落ちた。ついに麗子の白無垢の膝に、一滴の血が遠く小鳥のように飛んで届いた。
中尉がようやく右の脇腹まで引き廻したとき、すでに刃はやや浅くなって、膏と血に辷る刀身をあらわしていたが、突然嘔吐に襲われた中尉は、かすかな叫びをあげた。嘔吐が劇痛をさらに攪拌して、今まで固く締っていた腹が急に波打ち、その傷口が大きくひらけて、あたかも傷口がせい一ぱい吐瀉するように、腸が弾け出て来たのである。腸は主の苦痛も知らぬげに、健康な、いやらしいほどいきいきとした姿で、喜々として辷り出て股間にあふれた。中尉はうつむいて、肩で息をして目を薄目にあき、口から涎の糸を垂らしていた。肩には肩章の金がかがやいていた。
血はそこかしこに散って、中尉は自分の血溜りの中に膝までつかり、そこに片手をついて崩折れていた。血なまぐさい匂いが部屋にこもり、うつむきながら嘔吐をくりかえしている動きがありありと肩にあらわれた。腸に押し出されたかのように、刀身はすでに刃先まであらわれて中尉の右手に握られていた。