ガルシア・マルケス『百年の孤独』

「誰にも行く気はないらしい。わしらだけで出かけるか」。ウルスラは顔色ひとつ変えないで答えた。
「出かけませんよ。この土地に残ります。ここで子供を産んだんですからね」
「まだ死んだ者はいないじゃないか」と、彼は言った。「死人を土の下に埋めないうちは、どこの土地の人間というわけにはいかんのだ」
おだやかだが固い決意のこもった声で、ウルスラはやり返した。
「ここに残りたけりゃ死ねというのなら、ほんとに死ぬわよ!」

「名誉にかけて誓えるかね?」
「誓うよ。ただし、敵意にかけてだ」。そう言ってから、ホセ・アルカディオ・ブエンディアはつらそうな声でつけ加えた。「このことだけは言っとかなきゃ。あんたとわしは、これから先もかたき同士なんだ」

このあでやかな女たちは古今の恋の手くだに通じており、起たない者に刺激を与え、尻込みする者に活を与え、欲望の強い連中を堪能させ、回数の少ない連中を励まし、度のすぎる者をこらしめ、独りですませる者を改めさせる、あらゆる種類の塗り薬や器具を用意していた。

「そんな話、信じるでしょうか?」尼僧がそう言うと、フェルナンダは答えた。
「聖書を信じるくらいですもの。わたしの話だって信じるはずだわ」

ごきぶりが人間の残酷な手を逃れえたとすれば、それはひとえに、ごきぶりが闇に身をひそめたからである。人間に生まれつきそなわった闇への恐怖のおかげで、ごきぶりは不死身を誇っていられるのである。そのかわり、ごきぶりは昼間の明るい光に傷つきやすくなった。したがって、すでに中世においてそうであったように、現代においても、また未来においても、ごきぶり退治に有効な手段は、太陽のまぶしい光、これ以外にはない。