岡本太郎『美の呪力』

私は言いたい。全体をもって爆発し、己れを捨てることだ。捨てるということは一番自分をつかまえることなのである。ああオレは怒ってるな、と腹の底でにっこり笑いながら、真剣に憤っている。それが人間的なのである。表現の側から言えば、目をつりあげて怒りながら、同時にそれが笑いである。またその逆であるというような表現こそ、人生そのものの表情であり、また芸術だと思う。

とかく人々は旭日とともに人間が生れ、運命がひらくように考えたがる。しかし私はそれは逆だと思う。一日の終りから、生命が燃えあがるのだ。太陽が西の地平に、真赤に血をほとばしらせ、強烈な叫びをあげながら落ち込んで行く。そのとき人間の誇りと生きる意味が、突然大声とともにわきおこるのだ。全存在をもって生きたアカシと、新たな決意。