ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』

「自分の感情を言葉に言いあらわせないのがもどかしいんです」
「ああいう感情は、あなたにははじめてのものですものね。なにもかも……言葉に言いあらわす必要はないのよ」

「その答は本では見つからないし――他人のところへもちこんでみても解決は得られないのよ。あなたがこれから一生子供のままでいたいというなら話は別だけど。あなた自身で答を見つけなきゃいけない――正しい行為が直感できるようでなければ。チャーリイ、自分を信じることを学ばなくちゃいけないわ」

五月二十五日――かくして人間は自己嫌悪におちいるのである――己が間違ったことをしているのを知りながら、それをやめることができない。

七月五日――ピアノ協奏曲の第一作をフェイに捧げる。彼女は自分に献呈されたということで興奮したが、曲が気に入ったようには思えない。一人の女に、自分が望むすべてを期待はできないという証左にすぎない。一夫多妻主義への再論議の理由がもうひとつふえた。