アニメ『青い花〜Sweet Blue Flowers〜』第十一話【冬の花火】(最終回)


素晴らしかった。第一話から重ねてきた話を綺麗にまとめ、敢えて原作から変えていた部分を整合性よく回収し畳み、更に独自の解釈を提示して「青い花」の世界をより拡げて見せてくれた。素晴らしかった。
そういや第一話見終わった時と同じ感覚だった。すぅーっと体に溶け込む感動を全身に染み渡らせるべく、しばらくテレビの前でぼーっとしちゃうっていう。何もしたくない、寝たくもない、このまま浸っていたい……っといつまでもやってるわけもいかんくて思わず卵スープとか食べ出す始末(いみがわからない)。なんかもう満足しちゃって、イヤイヤ「青い花」まだ終わってないし!つって原作の続き(今号のエロf)読み返して確認する程に。

とまれ、一息ついて軽くラクガキして衝動を流し床に就き、朝目覚めては、窓の外は澄み渡る快晴……。ああ……世界は輝きに充ちている……。ピンキーあーちゃんふみちゃん出して撮影して描き足して、とかやってる内に戻ってくる日常。決して悪い意味でなく、色々あっても寝て起きたら明日は否応なく訪れる、なんてなことまで考えてしまった。
でも本当、一番上のは放送日の朝に描いたんだけど、7月の放映開始からコッチ、毎週水曜日が待ち遠しくてなあ……。生活にハリがあるっつーか、繰り返す日々にリズムがつくっつーか。ああ……これから何を楽しみに生きていけばいいのか……。ってだから原作は終わってないし!アニメ関連にしたってこれからDVDやらドラマCDやら出るし。ともかくも、楽しい、素敵な、素晴らしい作品でした。ありがとおー。

村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』

ハシが大きな声で泣いたり怯えて震えたり叱られていないのに謝ったりする時、キクは表情を変えずにいつまでもハシの回復を待った。だからハシは後を追って便所にもついていこうとしたが、キクは拒まなかった。キクにもハシが必要だったのだ。キクとハシは肉体と病気の関係だった。肉体は解決不可能な危機に見舞われた時病気の中に退避する。

キクはこのキラキラする街のルールを一つ知った。それは待つことだ。騒がず叫ばず暴力を振るわず走らず動き回らず。表情を変えずに、ただ待つのだ。自分のエネルギーが空になるまで待つことだ。

恐い夢を見たのだろうとアネモネは思った。ああ夢で良かったと胸を撫でまた続けて眠れる時は、恐い夢とは言わない。本当に恐い夢は目覚めてベッドの上で深呼吸しても、頭から抜け出し部屋を幽霊のように占領してどんどんその数が増え家具やカーテンの陰に隠れて見張りもう二度と眠ることはできない。

他人を驚かせたり怒らせたり感心させたり泣かせたりする度にこれまで全く縁の無かったものがハシの中で生まれた。自信である。テレビは鏡だった。鏡に映っている自分は今までと違って怯えて泣いたりしない。その逆だ。

「私はこの女を信じようと思いました、気は優しくて力持ちとよく言いますが、美樹ちゃんは、気は優しくて人殺し、なんです、優し過ぎるんです」

「ハシ、お前は確かにぞっとするほど歌がうまいよ、お前は音の質感を巧みに操作して奇妙な雰囲気を作り上げるのがうまい、いや、雰囲気を作るんじゃないな、真空状態にするんだ、気圧の無い空洞を聴く者の頭の中に開ける、お前の歌を聴く奴が不思議な白昼夢を見るのは、その空洞が記憶の破片を吸い込んでしまうからだ、お前はその手の歌手としちゃ超一流だよ、聴く奴の中に忍び込んで神経を撫で撫でする、麻薬と同じだ、だが群衆を支配しある高みに突き上げるためには麻薬だけでは足りない、爆弾が必要だ、聴衆が麻薬で築いた白昼夢を一瞬に吹き飛ばす爆弾が要るんだ」

キクは鮫の緑色の血の中で二つのことを知った。死に抗うのを止めると体から苦しさが消えること、心臓の鼓動が聞こえる間は諦めずに苦しさと戦い続けなければいけないこと、の二つだ。

痛みは踵から直接顎に響く。それでもハシは声を出さなかった。歯を噛みしめた。声を出すと、ごめんなさい、と言ってしまいそうだった。